学生時代の友人と久しぶりに会うことになり、またいつもの駅前の居酒屋かなあという考えがよぎった瞬間、今回は少し違いました。
電話口の向こうの友人が「ちょっと今度の場所はオレにまかしてくんない?」と言うのです。
場所とか食べ物にそんな興味がないやつだと思っていたので、その言葉に驚きつつ当日を迎えてみると、彼が選んだ場所は、ターミナル駅近くのビルの中。
スポーツジムに併設されたクラフトビールバーでした。
プールで泳ぐ人々を見下ろす格好の、お洒落なカウンター席で、友人から聞いてきた話が、きょうの話題です。
彼の勤めるIT系の会社の「福利厚生」の仕組みがはじまり、ジムの月会費が半額なばかりか、クラフトビール最初の一杯が毎晩無料だというのです……
福利厚生とは、給料以外に会社から与えられている報酬(権利)
とういう結論を頭の片隅に置きながら、読み進めて頂きたいと思います。
「働き方改革」のなかの「福利厚生」
「福利厚生」という言葉が近日、よく聞かれるようになったと思いませんか?
それは政府による「働き方改革」という政策の中で、使われているのを耳にすることが多くなったから、ではないでしょうか。
説明するまでもなく聞いたことがあることと思うのですが、現在日本の人口は減っており、なかでも労働者世代の人口が落ちています。
これは単純に言って「高齢化社会」ということなのですが、このとき問題は「老人が増える」「子どもが少ない」というような「数の問題」ではありません。
本当の働き方改革?
高齢者を支えるだけの労働力が足らない、労働者世代に生活の余力がないと新しい労働力が生まれない(少子化)状態になる。
だから、元気な高齢者は働けばよいのに高齢者が働くという環境じたいが整っていない、といった「社会の仕組み」、とりわけ「労働力」の問題として捉えることが重要なのです。
そのデータ自体は「事実」として落ち着いて把握したうえで、単純に「数」をいじろうとする前に何とかしよう。つまり、
労働力という「パワー」のデカさで、問題を乗り切ってやるぜ!
という勢いを感じるとこが「働き方改革」という政府の方針の、イカしてるとこです。
とビールを飲みながらの友人との結論は、そんなところに落ちていったのですが、みなさんはいかがお考えでしょうか……。
実は働かせ方改革?
「働き方改革」の問題について、これはまた別の日、会社の昼休みに直属の上司がニュースを見ながらつぶやいたのは、「『働き方改革』ってけっきょく『働かせ方改革』だからなあ……」というシニカルな言葉でした。
たしかに、「仕組み」をつくる側に自分がいると感じることは少ないかもしれません。
しかし、「働き方改革」が日本のパワーを持続するための政策で、「日本のパワー」って結局「わたしたちの仕事の結果」のことです。
だからわたしたちが働きやすくなるために日本社会の仕組みがいま動こうとしているのだ、という基本はおさえておいて損はないとおもうのです。
「福利厚生」で働くパワーをキープしよう!!
その「働き方改革」についてのポイントのひとつに、「福利厚生」があるといえます。
「福利厚生」とは、会社が給料として支払う給料以外の、「社員の生活を支える報酬」を指します。
いちばん基本的なところとしては、
「法定福利厚生」といわれる厚生年金や健康保険などの仕組み
があります。これは、会社が金銭を負担してくれることで、お金を実際にもらう以外の形でもらっている「報酬」、これが福利厚生です。
最近の非法定福利厚生
そして近年、この「福利厚生」が会社ごとに、さまざまな「非法定福利厚生」に幅を広げてきているのが実情と言えます。
たとえば最初に例に挙げた友人の会社では、スポーツジムの利用費用に助成が出たり、さらには毎日クラフトビールを一杯タダでのませてくれる。
このことにより、社員がプールで泳ぐようになりみんなが健康になって、会社の労働力がキープされる。
あるいは、会社がビールというストレス解消の仕組みを用意しておくことで、もしその一杯のビールをのまなかったら「こんな会社辞めてやるわ!」と辞表を持ってきたかもしれない労働者をキープしておく。
これが「会社側」からみた「福利厚生」の意味です。
双方にメリットのある福利厚生
わたしたち労働者が、そのような「福利厚生」を利用しない手はありません。
毎日ちがうクラフトビールをのんで帰るのがたのしみになっている、と酔った友人が何度も何度も言ってくるので、「いいからちょっとはプールで泳いでやせろよ」と言っておきましたが(笑)。
会社の「福利厚生」をうまく利用することは、日本社会の国力維持、なんてこと以上にダイレクトに、わたしたちの生活を豊かにしてくれるはずです。
みなさんの会社では、どのような「福利厚生」の仕組みがあるでしょうか。
もし知らない、あるいは利用したことがない、といった方がいらしたら、直属の上司など、会社の仕組みをよく知りつつも話しかけやすい立場の方に、ちょっと聞いてみたらよいと思いますよ。
不評な「福利厚生」もある……
ここまで友人の会社の話ばかりをしてきたのですが、私の経験した「福利厚生」というと、あまりよい思い出がなくですね(笑)、数年前に務めていた某中小企業の話をしてみましょう。
その従業員30人ほどの企業では、「福利厚生」の一環として、毎日勤務後(あるいは残業中)に「夕食」が無料で支給されるのです。
会社の社屋の並びにある社長の家に歩いて行って、社長の奥さん(取締役副社長)がつくる食事を食べます。とうぜん食費は浮きます。
家庭料理でありながらも、ちょっといい肉、ちょっと高級な調味料、などなどの雰囲気がただよい、なんだか豪勢な感じがします。
しかし、最初は家族の一員になったみたいで、毎晩楽しみにしていたのですが、職場に慣れ同僚と仲良くなるなかで、この「福利厚生」に対する疑問が、社内でふつふつと煮えたぎっていることに、鈍感なわたしもようやく気づいたのです。
「おいしそうにニコニコしてないと給料が減らされるらしいよ……」
「●●さん、きのうテーブルクロスにウスターソースこぼしたって。ありゃもうおしまいだわ。残念でしたー」
「だってカノジョとデート行くときどうすんの? もう何人おばさん危篤にしたと思ってん?」
と全員が、本気か冗談かわからないような夕食ネタで、顔を合わせるたびに盛り上がるようになり、それが理由で辞めたわけではありませんが、あの頃のことを思い出すだけですごい疲れます(笑)。
まとめ
けっきょく「福利厚生」というのは、会社から社員に与えられる「愛」のようなもの、と結論してみたいと思うのですが……
けれどやはり「愛」と一緒で、必要ない「福利厚生」は単なる「おせっかい」になってしまうんですよね。
「福利厚生」はあくまで会社の本業とは別物ですから、「福利厚生」の質で会社を選んで勤めることは少ないかもしれません。
しかし、たとえばいましている仕事の売り先(お客さん)を「会社」にしてみる、「福利厚生」の商品としてウチの会社の仕事は売れるかなあ、なんてことを、私は友人との呑みの帰り道に考えました。
それは自分の仕事がどの程度「愛」なのかなあ、「おせっかい」になってないかなあ、と考える有意義な思索に思えるのでした。
福利厚生とは、給料以外に会社から与えられている報酬
そしてそれは、会社が従業員にどのくらいの「愛」を与えてくれるのか?ということになると結論付けておきたいと思います。
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